ベイズ理論の応用を考える

今日は当たっても明日ははずれる

ギャンブルをしない冷静な人は、券が当たるのもはずれるのも「同様に確からしい確率」でサイコロを1個振って「1」が出たら当りのゲームならやっても、 サイコロを2個振って、全て「1」が出たら当りのゲームはやらないかも知れません。なぜならサイコロを1個振って「1」が出る確率は1/6ですが、 サイコロを2個振って、全て「1」が出る確率は1/36であり、当りにくいと判断するからです。 ところがギャンブラーは違います。当る確率は低ければ低いほど目の色が変わります。ギャンブラーには「同様に確からしい確率」は計算できません。その先にあるカネが重要であり、 一般にそのカネは当る確率が低ければ低いほど高くなります。カネを目の前にしてギャンブラーは「同様に確からしい確率」の計算はせずに、「当たるのが確からしい確率」の計算を行います。 例えばボートレースは6艇が競う競技で1着、2着、3着を予想して舟券を購入し的中させると、舟券のレートに応じた払い戻し金を得ることができます。 いわゆる三連単は1/120の「同様に確からしい確率」で当たるというのが一般の人の計算ですが、ギャンブラーはアタマは絶対1号艇がきて、次(ヒモ)は3号艇がきて、トリは残り4艇のいずれかという いつのまにやら1/4の「当たるのが確からしい確率」の計算を行います。

ここでまず注意して頂きたいのは「同様に確からしい確率」という数学の用語はあっても、「当たるのが確からしい確率」という言葉はありません。

ところがサイコロのように「同様に確からしい確率」では説明しきれない現象や試行が多いのも確かです。 例えば当りくじとハズレくじが有限個入っている箱があり、その中に何枚の当りくじとハズレくじが入っているかはわからないと仮定します。 一回クジを引いたら、当りが出ました。ところが二回目はハズレです。まだ何度も引いてはいませんが、当りとハズレは大体半々(1/2)かもしれないと予測できます。 さて三回目はハズレでした。次は当りやすいでしょうか?それともハズレやすいでしょうか? 「同様に確からしい確率」で計算すれば、当りの確率は二回目の1/2から三回目は1/3で当りが出る確率は減ってしまいました。 ところがクジは有限です。三回目にハズレを引いたということは、ハズレクジが箱の中から減っています。つまりハズレの確率が減って、 当りが出る確率が増えているかもしれません。

一回目、二回目の試行結果をもとにして、三回目の確率をもとめる方法がベイズ理論を使った確率計算となります。 概念としては一回目、二回目が事前確率、三回目が事前確率を条件として仮定される条件付き確率になります。

試行とその結果の都度、確率は変化していくという考え方です。卑近な例に戻ると舟券士はアタマを決め打ちしたら、それを条件にヒモを決めるようです。 そのとき舟券士の脳内おみくじ箱にはコース別にどの艇が来るかの確率分布が良かれ悪しかれ入っており、それを条件に舟券を買って、当たるときもあればはずれるときもあるのです。

もし1号艇がきたら次は3号艇がきやすいなどといった考え方は、無線通信の中でも生きてきます。 今、符号Aを受信しているから次は符号Bがくる確率が高いなという考え方です。 その昔、平文でモールス通信を行う通信士は無意識のうちに、この考え方を使って、消えてゆく音を補完しながら紙に記録していたに違いありません。 それと同様な手法でDSP等を使って信号を選択受信するシステムが無線デジタル通信の普及の背景にあります。

HOME