数値気象解析と衛星電波科学

はじめに

気象衛星からの画像として一般に入手が容易なものとして、気象庁から報じられる画像があります。 (気象庁・気象衛星) この画像により高度の高い空域の雲の分布と高度の低い空域の雲の分布を把握することができます。 しかし竜巻災害や土砂災害の起因となる積乱雲の発生については、どのようにして把握しているのでしょうか。 気象の観測・予測の実務をもとに、日常生活でも使える気象予測のノウハウを検討し、さらに数値気象解析の説明を行なっていきます。

可視画像と赤外画像

可視画像とは、波長帯0.55〜0.90μmの可視センサーによって、太陽光線の反射をもとに作成された画像で、 人間の眼で見るのと同様な雲の分布を映します。 一方、赤外画像は温度の低いところほど白く表示されるため、一般には高度の高い層の雲の分布を示します。 航空の分野では雲の状態は大変重要です。VFRフライトであれば雲に入るのは禁止されているので可視画像による 雲の分布は重要です。可視画像の分布は水平方向の状態なので、これに鉛直情報を加えて雲の状態を予測することは、 安全な運航に役立ちます。鉛直情報は雲底高度を各空港から報じられるMETAR(あるいはTAF)が参考にできます。 IFRフライトの場合は比較的高度が高く、雲を突き抜けて設定された高度を飛ぶ可能性もあるので、 可視画像だけでなく、赤外画像もあわせて空の状況を予測することができるかもしれません。 また可視画像と赤外画像を組み合わせて、レーダーエコー等と比べてみることで雲の厚みや降雨の状況を画像で イメージできるかも知れません。

積乱雲を探せ

近年の自然災害を見ると、積乱雲の突然の発達・発生は台風よりも性質が悪いように感じます。 台風の接近に対しては十分な備えをする時間があるのですが、積乱雲の発生は観測は出来ても予測は難しく、 遠目に見ればかなとこをもった入道雲で夏の風物詩なのですが、その雲の付近は激しい降雨やタービュランスで、 地上で過ごす人にとっても、空を飛ぶ人にとっても災いをもたらすだけのものでしかありません。 気象予測の実務でも積乱雲の可能性はある程度予測できても、結局は観測するしかなく、いかに早く正確に 積乱雲を見つけるかがポイントになるようです。 さて積乱雲を見つけるためには、赤外画像を使った観測方法があります。 積乱雲は水蒸気を含んだ空気が対流圏界面ほどの高度に上昇してできる雲であるため、 赤外画像で白く輝いている箇所があれば、積乱雲の存在が予測されます。 可視画像でも予測はできますが、高層部の雲の状況を確認できるという点では赤外画像が確実であるし、 可視画像の場合は夜は確認できませんが、赤外画像の場合は24時間確認することができます。

なお赤外画像と一口に言っても実は4種類のパターンがあります。波長帯が異なることで区分されており、 次の通りとなります。

この4つはそれぞれ波長帯が違うため、お互いの差分をとることで大気の鉛直流様子を把握することができます。

大雨・土砂降りにあっていると雲どころではありませんが、赤外画像を活用しながら自分が浴びた雨はどのような雲から 落ちてきたものかを気象情報と経験で覚えていくと、解析的な気象予測ができるようになるでしょう。

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