はじめに

revised at 2014.09.11

エーテル!!

すべてはこの神秘なる物質の追究から始まった。18世紀が終焉を迎えようとしていた時代に、万有引力の法則を礎としたニュートン力学は全盛期を迎えていた。すべての自然現象をニュートン力学で記述され、電荷間にはたらく力も、地球とりんごのように万有引力(遠隔作用)の考え方で 表現されていた。そうした時代のなかでファラデー(M.Farady, 1791〜1867)は近接作用を直観しエーテルの存在を主張したのである。 話題騒然として、エーテルはニュートン力学を根底から大きく揺れ動かしたが、結局はマイケルソン-モーレーの実験によりその存在は否定され、さらにかの有名なアインシュタインによる特殊相対性理論が確立することによって物理学史から姿を消すこととなる。

しかしながらエーテルの追究は無駄ではなかった。エーテルは存在しなかったが、エーテルに相当する何かは自然界を記述するために必要だったのである。それはエーテルの追究による副産物であったかもしれないが、確固たる体系として新たな地平を切り拓いたのである。

ファラデーの業績はやがてマクスウェルにより体系化され電磁気学の確立に至った。電磁気学の4つの基本法則はエーテルならぬ電波の存在を予言し、やがてヘルツによりその存在が証明されたのである。電波の発見により物理学は大いなる歴史の分岐点を迎えたのだ。これを節目にして理論の世界では量子力学や相対性理論が華々しく歴史を塗りかえ、今や宇宙の根源までにも迫ろうとしている。また一方で人類の生活は電波により多大なる恩恵を受けたきたし、これからも豊かになり続けようとしている。純粋に理論的な追究をしていく流れと、生活を豊かにしようとする流れ、2つの流れの分水嶺には無線工学というフィールドがある。本稿では無線工学にスポットをあてて、陸から海から空から宇宙へと駆け抜けた通信とその技術に迫ってみたいと思う。

2012.06.01 起稿

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本サイトは衛星の無線通信システムを中心に無線通信技術の理論や工学についての記事を掲載しています。 無線通信の主役である電波は、地球上全てをカバーしており、航空/船舶/放送/気象等の様々な分野にふれてシステム全体を眺め、無線工学や理論がどのように応用されているかを見ていきます。 記事は入門者向けに読みやすくするため、規則や法規の詳細や制限を考慮していない説明もあるため、無線機器や通信システムの設計を行う場合は注意が必要です。

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